債務整理|根抵当権をめぐる詐欺事件

原告
実父
本件

主文

原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。
同被告人を懲役2年6月に処する。
同被告人に対し,この裁判が確定した日から4年間上記刑の執行を猶予する。
原審における訴訟費用は,その4分の1を同被告人の負担とする。
被告人Bの本件控訴を棄却する。

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理由

1 被告人Aの本件控訴の趣意は,弁護人浦部信児及び同大森礼子共同作成の控訴趣意書に,被告人Bの本件控訴の趣意は,弁護人酒井満太作成の控訴趣意書にそれぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。
そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討し,次のとおり判断する。
2 被告人両名の控訴趣意中,詐欺に関する事実誤認及び法令適用の誤りについて
論旨は,要するに,原判決は,被告人両名が共犯者C(平成17年1月死亡)及び同Dと共謀し,平成14年2月から同年3月にかけて,当時のa町及びa町土地開発公社が株式会社Eから土地を買い入れるに当たり,同土地に根抵当権を設定していた株式会社Fに対し,その売買代金が2億3000万円であるのに2億円であるように装い,その旨誤信させて上記根抵当権設定登記を抹消させ,Eに財産上不法の利益を得させたという2項詐欺の事実を認定したが,被告人両名には2項詐欺の故意,すなわち2項詐欺の成立に必要な欺罔行為についての認識がなかったし,また,根抵当権の交換価値を検討すれば,Fには損害が発生していないことが明らかであるのに,根抵当権設定登記の抹消それ自体を財産上の損害に当たると判断したのであるから,原判決は,故意の成立及び損害の発生につき,事実を誤認し,かつ,刑法246条2項の解釈を誤っており,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,原判決が,その挙示する証拠に基づき,被告人両名につき,Fに対し本件土地の売買代金を偽ることの認識があったとして2項詐欺の故意を認め,かつ,Fが根抵当権設定登記の抹消に応じたこと自体が財産上の損害に当たると判断し,上記のとおり2項詐欺の成立を肯認したことは相当であり,原判決に事実の誤認や法令適用の誤りがあるとは認められない。
所論は,被告人両名が,Fに対し,本件土地の売買代金を真実は2億3000万円であるのに2億円であると偽ることを認識していたとしても,Fが債権回収について特殊な方針,すなわち,担保不動産の売買代金から経費を控除した残額すべての弁済を受けた場合に限って根抵当権設定登記の抹消に応じるという方針をとっていたことを認識していなければ,Fに売買代金の額を偽ることが根抵当権設定登記を抹消させる手段となることまで認識していたとはいえないので,財産的処分行為に向けられた欺罔行為を行うことの認識があったとはいえず,被告人両名には2項詐欺の故意がなかった旨主張する。
しかし,関係証拠によると,Fは,金融機関の有する不良債権を買い取り,その債権の回収を目的として設立されたものであり,できる限り債権額に近い額での回収を目指すのは当然であり,本件土地が代金2億円で売買され,その代金から経費5750万円を控除した残額1億4250万円がすべてFへの返済に充てられることを前提として,根抵当権設定登記の抹消に応じたものであるが,仮に売買代金が2億3000万円であることを知っておれば,1億4250万円以上の弁済を受けなければ根抵当権設定登記の抹消に応じることはなかったと考えるのが相当であり,そうすると,被告人らに欺罔されて売買代金が2億円であると誤信したため根抵当権設定登記の抹消に応じたことが明らかであるところ,被告人Aは,原審公判廷において,共犯者Cとの間で,最終的に平成13年3月ころ,2億3000万円で本件土地を買収するにもかかわらず,Fには売買代金が2億円であると嘘の説明をして根抵当権を抜いてもらい,3000万円を裏金として浮かせることに決まった旨,及びFが実際の売買代金が2億3000万円であると知ったら話は進まなかったと思う旨供述し,また,被告人Bも,原審公判廷において,同年10月ころ,被告人Aから本件土地の売買代金が2億3000万円であると聞かされた後,共犯者CからFには売買代金を2億円であると偽って真実の売買代金との差額3000万円を他の債権者への工作資金ないし裏金として残すと言われ,Fを騙して根抵当権を抹消させることが分かった旨供述しているのであり,被告人両名とも,少なくともFに対し売買代金を2億円であると偽ることによって何らかの財産的処分行為をさせて財産上の損害を与えることを認識していたのであるから,Fが根抵当権の抹消についてどのような判断をするか,またFに具体的にどのような損害を発生させることになるかについて認識がなかったとしても,2項詐欺の故意の成立に必要な認識,すなわち財産的処分行為に向けられた欺罔行為を行うことの認識はあったというべきである。
なお,被告人Aの弁護人らは,原判決では,被告人らがFに対し平成14年2月19日付け買付証明書をファクシミリ送信した行為が欺罔に当たると認定されているが,(1)買付証明書は買主の希望価格を記載したものに過ぎず,これに記載された価格での購入が買主に義務づけられるものではないし,(2)Fの依頼に応じて上記買付証明書を送信したのであるから,上記行為が2項詐欺の故意に裏付けられたものとはいえない旨主張するが,上記買付証明書がFにファクシミリ送信されるに至った経緯につき,Fの本件土地の担当者であったG及びHは,原審公判廷において,平成13年4月24日,共犯者Dからa町が2億円で本件土地を買収する話があると言われ,多額の回収が見込める情報であったため,これを証明できる資料を送って欲しいと依頼し,翌25日,同月20日付け被告人A名義の買付証明書を受け取り,その内容を見て,a町長が本件土地を代金2億円で買い受ける約束をしているものと理解したこと,その後,Fは,上記買付証明書の作成日付が古くなったため,平成14年2月15日,根抵当権抹消の可否を決する稟議資料として被告人Bに改めてa町長名義の買付証明書の発行を依頼し,同月20日,同月19日付けa町長発行名義で売買金額を2億円とする買付証明書コピーをファクシミリで受け取ったことをそれぞれ供述しており,以上によれば,買付証明書が町長作成名義の公文書として決定的役割を果たしたことは明らかである。
他方,被告人Aは,共犯者Dから同Cを通じてFに提出するためa町発行の金額2億円の買付証明書が欲しいと依頼され,Fに売買代金が2億円であると信じさせるため,被告人Bにその旨の買付証明書を作成して共犯者Cに渡すよう指示し,被告人Bは,3000万円の裏金を作る動機の詳細は聞いていなかったとはいえ,結果的にFを騙すことになることを承知の上でa町長名義の金額2億円の買付証明書を作成して上記のとおりFに送信することに協力したのであるから,被告人らが共謀の上,Fに対し平成14年2月19日付け買付証明書のコピーを送信した行為は,a町が公式に本件土地を代金2億円で買収する意向であることをFに告知し,根抵当権の抹消に応じるよう働き掛けたものにほかならず,それがF側の依頼に応じて送信したものであったとしても,上記行為は2項詐欺の故意に裏付けられたものといわなければならない。
また,被告人Bの弁護人は,(1)真実の売買代金は2億円であったから,その旨をFに申し向けたとしても,そもそも売買代金を偽ったとはいえないこと,(2)2億3000万円がすべて抵当権者や差押債権者らに対する債務の支払に充てられるものと信じて疑わず,EのDや被告人Aらが3000万円を分配取得しようとして,真実の売買代金2億円に上乗せして2億3000万円としたことを全く知らなかったことを指摘し,被告人Bには2項詐欺の故意がなかった旨主張する。
しかし,上記(1)については,関係証拠によると,被告人Aは,平成13年12月開催のa町議会定例会において,本件土地の買収資金2億3000万円を計上した一般会計補正予算を議案として提出し,これが全会一致で可決されたこと,その後,被告人Aは,本件土地のうちIの土地をいったん公社が取得してa町が公社から買い取ることにした方が得策であることが分かったため,平成14年1月開催の同町議会臨時会において,上記土地の買収資金を1億4573万8000円に減額修正する補正予算を議案として提出し,これが全会一致で可決されたほか,同月中に,公社の理事長として理事会を招集し,本件土地のうちIの土地を8400万円台の金額で買収することを提案して補正予算を提出し,全会一致で承認を得たこと,被告人Aは,同年3月12日,a町長としてEから代金1億4573万8000円でJの土地を買い受ける旨の仮契約を締結し,同月開催の同町議会定例会に契約締結についての議案を提出し,全会一致で可決され,本契約として成立させると共に,同月12日,公社理事長としEから代金8426万2000円でIの土地を買い受ける旨の契約を締結したことなどが認められ,これらの事実によると,a町及び公社がEから本件土地を代金合計2億3000万円で買い受ける旨の売買契約が成立したことは明らかというべきである。
なお,本件詐欺に係るFの被告人両名及び共犯者Dに対する損害賠償請求事件の第一審及び控訴審の各判決では,売買代金2億3000万円のうち裏金3000万円に相当する部分は通謀虚偽表示により無効であると判示されているが,これは,民法上,a町及び公社が,Eとの間で,真意(内心の効果意思)と異なる表示をすることについて通謀した,すなわち,表示上は本件土地を代金合計2億3000万円で売買する旨の契約を成立させるが,真意は本件土地の売買代金を合計2億円とする旨の合意をしたのであるから,当事者の真意に従って売買代金中2億円を超える部分は当事者間では何らの効力を生じないものとされること(同法94条1項)を判示したものに過ぎないのであって,これに対し,刑法上の詐欺罪は,経済的な取引秩序を維持して適法な財産状態を保護することを目的とするものであり,当事者間では真意が尊重されるとしても,当事者以外の第三者との関係では,表示から推断される意思(表示上の効果意思)に従って取引関係が形成されるため,この表示に対する信頼を維持しなければ上記目的を達することはできないので,本件土地についても表示上の意思に従って代金合計2億3000万円の売買契約が成立したことを前提として2項詐欺の成否を考えるべきである。
そうすると,a町及び公社は,Eとの間で,表示上,本件土地を代金合計2億3000万円で売買する旨の契約を成立させた以上,第三者であるFとの関係では,その表示に従って売買契約が成立したことを前提として行動することが要請されるので,Fに対して売買代金が2億円であると申し向けた行為は売買代金を偽るものといわなければならない。
また,上記(2)については,関係証拠によると,被告人Bは,平成13年4月ころ,共犯者Cの話を聞き,Fが本件土地に順位1番の根抵当権を有しているため,その承諾がなければ,本件土地の売買自体ができないことが分かったこと,被告人Bは,同年10月ころ,共犯者Cから,本件土地の売買代金が2億円から2億3000万円になるが,Fには売買代金は2億円であると告げて3000万円を浮かすと言われ,Fに損害を与えることになると思ったこと,それにもかかわらず,被告人Bは,平成14年2月20日ころ,本件土地を代金2億円で買い受ける旨記載したa町長名義の買付証明書をFに送信し,Fには売買代金が2億3000万円であることを秘して2億円であると誤信させたことなどが認められ,これらの事実によると,被告人Bは,Fに対し,本件土地の売買代金が2億3000万円であるのに2億円であると欺き,その旨根抵当権抹消につき異なる前提条件を示して誤信させ,Fに損害を与えることを認識していたのであるから,その差額3000万円の使途を着服ではなく,F以外の債権者の説得のために使われると予測し,正しく認識していなかったとしても,2項詐欺の故意の成立に欠けるところはないというべきである。
次に,所論は,(1)Fは,本件土地の価値を368万3000円と評価し,これを前提として本件土地の交換価値を把握していたに過ぎないのに,その評価を大幅に上回る1億4250万円もの弁済を受けたこと(被告人両名の弁護人らの主張),(2)Fの債権は,無担保になったとはいえ,弁済を受けていない部分は残っており,その全体財産を侵害したとはいえないこと(被告人Aの弁護人らの主張),(3)Fが本件土地の実際の処分価格を交換価値として把握していたとしても,実際の処分価格すなわち真実の売買代金は2億円であったから,Fにおいて売買代金が2億3000万円であるのに2億円であると誤信したことにより3000万円の弁済を受けられず損害を被ったとはいえないこと(被告人Bの弁護人の主張),以上の理由を指摘し,Fに損害が発生していない旨主張する。
しかし,Fは,本件土地の上に根抵当権を有していたにもかかわらず,売買代金について欺かれたために根抵当権設定登記の抹消に応じて根抵当権を喪失したのであるが,根抵当権は,目的物の交換価値を把握し,そこから優先弁済を受ける権利であり,目的物の価値が金銭その他の物に変形しても,その価値変形物の上に効力を及ぼすものであって,それ自体が財産的な価値を有するものと認められるから,根抵当権を喪失したこと自体が財産上の損害であるということができるので,上記(1)のように本件土地の価値変形物である売買代金の額がFの評価より高かったとしても,また上記(2)のようにFの被担保債権のうち弁済を受けなかった部分はなお残っているとしても,Fが根抵当権の喪失という財産上の損害を被ったことは否定できないというべきである。更に,上記(3)の主張は,真実の売買代金が2億円であること,及びFが3000万円の弁済を受けられなかったことが財産上の損害であることを前提とするものであるが,既に説示したとおり,本件土地についてはa町及び公社がEとの間で表示上の意思に従って代金合計2億3000万円の売買契約が成立したことを前提として2項詐欺の成否を考えるべきであり,またFが根抵当権を喪失したこと自体が財産上の損害であると解すべきであるから,これに反する上記(3)の主張は採用できない。
もっとも,上記損害賠償請求事件の第一審及び控訴審の各判決では,Fが3000万円相当の損害を被ったとは認められないと判示されているが,これは,民法上,Fが,本件土地を代金合計2億3000万円で売買するとの虚偽表示の外形を信頼したものではないので,同法94条2項の第三者には当たらず,当事者であるa町及び公社とEとの間では代金合計2億円の限度で売買の効力が認められるに過ぎないところ,Fは,上記2億円の代金額を前提として取引関係に入ったのであるから,表示上の代金との差額である3000万円相当の損害を被ったとはいえないというものであって,Fが被告人らの詐欺行為によって根抵当権を喪失し適法な財産状態を侵害されたことまで否定するものではないといわなければならない。
更に,所論は,原判決は,売買代金を偽った行為が刑法246条2項の欺罔行為に該当し,またFが根抵当権を抹消したことが財産上の損害に当たると判断したが,(1)売買代金を偽っただけでは欺罔行為には当たらないし,(2)財産上の損害については根抵当権の交換価値を検討する必要があるのに,その検討をしていないので,刑法246条2項の解釈を誤っている旨主張するが,上記(1)については,Fは,被告人らに欺かれて本件土地の売買代金が2億円であると誤信しなければ,根抵当権設定登記の抹消に応じることはなかったということができるので,被告人らが売買代金を偽った行為が刑法246条2項の欺罔行為に当たると判断した原判決は相当であり,上記(2)については,Fが上記根抵当権を喪失したこと自体が財産上の損害に当たるというべきであり,その損害の有無を判断するに当たって根抵当権の交換価値を検討する必要はないので,原判決がその検討をしなかったことに何ら問題はないというべきである。
したがって,原判決には刑法246条2項の解釈の誤りはなく,所論は採用できない。
論旨は理由がない。
3 被告人Bの控訴趣意中,虚偽有印公文書作成及び同行使に関する事実誤認について
論旨は,要するに,原判決は,被告人Bが同Aらと共謀し,平成14年2月20日ころ,Fが根抵当権を設定した本件土地の売買代金が2億3000万円であるのに,本件土地を2億円で買い受ける旨,虚偽の内容を記載したa町長A名義の買付証明書を作成し,Fにファクシミリ送信して行使したという虚偽有印公文書作成及び同行使の事実を認定したが,真実の売買代金は2億円であったから,その旨記載した買付証明書の内容は虚偽ではないので,上記のとおり虚偽有印公文書作成及び同行使の事実を認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。
しかしながら,既に説示したとおり,第三者であるFとの関係では本件土地を代金合計2億3000万円で売買する旨の契約が成立しているにもかかわらず,上記買付証明書には売買代金が2億円である旨記載されているので,その記載内容は明らかに虚偽であるから,原判決が上記のとおり虚偽有印公文書作成及び同行使の事実を認定したことは相当であり,原判決に事実の誤認があるとは認められない。
論旨は理由がない。
4 被告人Aの控訴趣意中,背任に関する事実誤認及び法令適用の誤りについて
論旨は,要するに,原判決は,被告人Aが共犯者D及び同Cと共謀し,本件土地の売買につき,自己及び共犯者らの利益を図る目的で,a町や公社の財政の健全性の確保に努めるべき任務に背き,平成14年3月12日ころから同月27日ころにかけて,a町及び公社がEから本件土地を合計2億3000万円で買い入れる旨の売買契約を締結し,その代金を支出させ,a町及び公社に合計3000万円の損害を加えたという背任の事実を認定したが,a町及び公社には損害が発生していないのに,損害発生の事実を認定し,また,仮に損害が発生しているとしても,被告人Aには売買契約の締結やその代金について決定する権限がなく,その任務違背行為と上記損害の発生との間には因果関係がないにもかかわらず,刑法247条にいう「任務」の解釈適用を誤り,被告人Aが任務違背行為に及んだ事実を認定したので,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,原判決が,被告人Aが本件土地を代金2億円で購入できたのに,a町議会及び公社理事会に本件土地を合計2億3000万円で購入する内容の売買契約を締結することの議決をさせ,その金額を支出させたことがa町長や公社理事長としての任務に違背すると判断した上,これによってa町及び公社に損害を被らせたものと認め,上記のとおり背任の事実を認定したことは相当であり,原判決に事実の誤認や法令適用の誤りがあるとは認められない。
所論は,(1)a町及び公社が本件土地を合計2億円で購入することができたかどうかは明らかでなく,実際の売買代金2億3000万円との差額3000万円相当の損害がa町及び公社に発生したとはいえないし,(2)被告人Aは,a町長又は公社理事長として,a町議会や公社理事会の議決に従って売買契約を締結する権限を有するに過ぎず,その議決を左右できる立場にはないので,上記損害が発生したとしても,それは,a町議会や公社理事会が売買契約を締結する旨議決した結果であり,被告人Aが売買契約を締結したことによるものではない旨主張する。
しかし,上記(1)については,関係証拠によると,共犯者Dは,倒産状態にあるEで代表取締役に代わってEの負債や資産の整理に携わっていたものであるが,平成13年3月ころ,共犯者Cの来訪を受け,a町がEから本件土地を買収するに当たり,3000万円を裏金として浮かせ,そのうち500万円をEの取り分とするので,Fには買収金額が2億3000万円であることを秘して2億円であると嘘の説明をして欲しいと持ち掛けられ,これに応じる決意を固めたこと,また,Fの前記担当者らは,同年4月ころ,共犯者Dから本件土地の売買代金が2億円であると説明され,a町からも同旨の買付証明書を受け取り,本件土地について代金2億円の買収の話が進めば被担保債権の大幅な回収処理ができると考え,平成14年3月6日には売買代金が2億円であることを前提として根抵当権設定登記の抹消を承諾したことなどが認められ,これらの事実によると,a町及び公社は本件土地をEから代金2億円で買収することは可能であったということができ,これと前提を異にする所論は採用できないし,また,上記(2)については,被告人Aは,前述のとおり,a町議会に本件土地の買収資金に関して補正予算を議案として提出し,その可決を得た上,Eとの間でJの土地の売買について仮契約を締結し,同町議会に契約締結について議案を提出し,その可決を得て本契約を成立させると共に,公社理事会にもIの土地の買収を提案して補正予算を提出し,その可決を得た上,Eとの間で同土地の売買契約を締結したのであるから,被告人Aは,本件土地の売買についてa町議会や公社理事会の議決を得た上,これに基づいて売買契約を締結し,a町及び公社に合計3000万円相当の損害を発生させたものであって,被告人Aによる売買契約の締結と上記損害との間には相当因果関係があるといわなければならない。
また,所論は,原判決は,(1)背任罪にいう「任務」は自己が直接担当する義務であるのに,a町や公社の健全財政の確保に努めるべき義務であるとして公務員の一般・抽象的義務で足りるとし,(2)被告人には売買契約を締結するかどうかの決定権限がなかったのに,その権限があったとして被告人の任務違背を認めており,刑法247条の解釈適用を誤っている,というのである。
しかし,上記(1)については,原判決は,被告人が,売主等と交渉するなどして,できるだけ有利な価格で売買契約を締結し,a町や公社の財政の健全性の確保に努めるべき任務を有していた旨,被告人が担当する具体的な任務を認定しているので,この点で刑法247条の解釈を誤ったとはいえないし,上記(2)については,背任罪の成立には必ずしも行為者が自己単独の意思をもってその事務を左右する権限を有することは必要でなく,他にその事務の遂行につき決定権限を有する者があっても,行為者の担当する事務の範囲内に属する以上は背任罪が成立するというべきであるところ,被告人Aは,本件土地につき売買契約を締結するかどうかの決定権限を有しなかったとしても,売買契約の締結に向けて交渉を進め,その内容をa町議会や公社理事会で説明し,補正予算や契約締結に関する議決を得た上で実際に売買契約を締結すべき任務を有していたのであるから,本件土地の売買契約の締結は,被告人Aがa町長又は公社理事長として担当する事務の範囲内に属する事項であるということができ,その任務違背について背任罪の成立を認めた原判決が刑法247条の解釈適用を誤ったということもできない。
論旨は理由がない。
5 被告人Aの控訴趣意中,量刑不当について
論旨は,要するに,被告人Aに対しては,刑の執行を猶予するのが相当であり,被告人を懲役2年6月の実刑に処した原判決の量刑は,共犯者Dに刑の執行猶予が付されたことと比較し,重過ぎて不当である,というのである。
本件各犯行は,上記のとおり,被告人Aが,共犯者Cらと共謀し,Fに対し,本件土地の売買代金が真実は2億3000万円であるのに2億円であると欺き,本件土地上の根抵当権設定登記を抹消させて損害を与えたという2項詐欺,その過程で敢行された売買代金が2億円であると虚偽の内容を記載した公文書を作成してFに送信したという虚偽公文書作成及び同行使,a町及び公社の任務に背き,本件土地の売買代金2億3000万円を支出させ,a町及び公社に合計3000万円相当の損害を与えたという背任の各事案であるが,本件各犯行は,a町長や同町議会議員らが土地買収に絡んで不正の利益を得ようとした計画性の高い犯行であり,その態様も,不良債権等の処理を適正に行う機関として公的使命を負っていたFを欺罔し,かつ住民の福祉の増進に寄与すべき公的団体であるa町や公社の任務に背くという,反社会性の強いものであった上,その被害も多額に上っていること,被告人Aは,a町長や公社理事長という公共性の高い重要な職責を担っていたにもかかわらず,その立場を悪用し,a町議会や公社理事会に補正予算を議案として提出して議決を得るなどの重要な役割を果たしており,本件各犯行において主導的な立場にあったこと,被告人Aは,平成10年の町長選の際に多額の借金を抱え,更に平成14年の町長選でも選挙資金が必要であったことから本件各犯行に及び,これにより1000万円の利益を得て,借金返済,選挙資金,飲食費等,専ら自己の用途に費消したものであり,その私欲に基づく動機に特に酌むべき点はないことなどを考慮すると,犯情は芳しくなく,その刑事責任は決して軽視できない。
そうすると,他方において,被告人Aは,a町長に就任した当時から本件土地の有効利用が課題となっており,その買収手続を進める中で,共犯者Cから裏金作りの計画を持ち掛けられて犯意を生じたものであり,当初から犯行の機会を窺っていたものではないこと,被告人Aは,a町の町民に迷惑を掛けたと反省し,原審での保釈後にa町長の職を辞したこと,前科がないこと,高齢であること,妻と幼い孫の生活を支えるべき立場にあること,妻は,脳梗塞を患っていた上,本件各犯行により精神的打撃を受け,うつ病に罹患したことなど,被告人のため斟酌すべき諸事情を考慮しても,本件各犯行は計画性が高く町長という公的立場をわきまえない反社会性の強いものであり,その被害も多額であることに徴すると,原判決言渡しの時点においては,被告人Aに対し刑の執行猶予を付するのが相当であるとはいえず,被告人Aを懲役2年6月(求刑懲役3年)の実刑に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとまではいえない。
しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,被告人Aは,反省を深め,預貯金や身内の援助で1000万円を用意し,これをa町及び公社に対する被害弁償に充てるため,主任弁護人の管理する預金口座に入金して預けたため,少なくとも自己が費消した分については被害回復が可能となったこと,妻がうつ病で今なお通院しているため,妻に代わって日常の家事を行うと共に,孫の監護養育にも努めていることなど,更に被告人のために斟酌すべき事情が明らかとなり,これらの事情と上記の原判決当時判明していた諸事情を併せ考えると,原判決の量刑は,現時点においては,被告人Aに対し刑の執行を猶予しなかった点で重きに過ぎることになったと認められる。
6 よって,刑訴法397条2項により原判決中被告人Aに関する部分を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。
原判決の認定した犯罪事実に原判決と同一の法令を適用し,上記の諸事情を勘案して,被告人Aを懲役2年6月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間上記刑の執行を猶予し,原審における訴訟費用は,刑訴法181条1項本文によりその4分の1を被告人Aに負担させることとし,主文のとおり判決する。
また,被告人Bの本件控訴は理由がないから,刑訴法396条を適用してこれを棄却することとする。

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消費者金融やクレジットカード会社は、弁護士や司法書士などの専門家の介入しない件で、本人に対し、訴訟外で過払い金を返還することはまずあり得ない。
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本人訴訟の場合、貸金業者側の反撃に遭い、後記の民法704条に基づく利息を付さない和解に追い込まれるケースが多いといわれ、また、後掲のように、取引履歴の不開示があったり、充当関係で複雑な事案であったりすると、本人訴訟で法律上正しい金額の返還を受けることは極めて困難なのが現実。


税金や社会保険は?

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下記は、「税金や社会保険は?」です。

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